2025年度理事長所信
一般社団法人丹羽青年会議所
第31代理事長
鈴木健午
~ 雲外蒼天~
青年よ、大志を抱け
【はじめに】
あなたは自分が住んでいるまちを愛していますか。例えば 30 年後、自分の子どもや大切な人に対して、このまちに住み続けることを誠実に勧めることができるでしょうか。我々丹羽青年会議所のメンバーは、これらの問いに胸を張って「はい」と答えられるメンバーが所属する団体です。また、このまちに住み暮らす人々からも同じ答えが返ってくるような社会の仕組み作りを目指しています。丹羽青年会議所は、1995 年の阪神淡路大震災が発災した激動の時代に大口町と扶桑町を活動エリアとする 765 番目の青年会議所として設立されました。創立宣言文には、設立の目的が以下のように述べられています。「今、我らが郷土丹羽郡の地をこよなく愛する青年が、相集い、力強く立ち上がった。世界を見つめ、“社会と人間の開発”をメインテーマとする青年会議所活運動に身を投じ、明日へ向かい大きなうねりを起こし、友情をもって世界と連帯し、個人の修練と社会の奉仕を通じ、我が郷土の限りない発展と、明るい豊かな社会の実現を目指して、英知と勇気と情熱をもって行動することを誓い、我々はここに丹羽青年会議所の創立を宣言する。」この宣言のもと、これまで多くの先輩達が自分たちの住み暮らすまちを豊かにしようと運動を続け、31 年が経過しました。その間に我々の生活は便利で豊かになり、それと同時に世界は情報技術の発展により身近でコンパクトになりました。情報技術の発展は我々の生活やビジネスにおいて良い影響を多くもたらしましたが、同時に予見もしなかった問題や課題が生まれてきたことも事実です。便利な世界は地球の人口増加を促進し、戦争や紛争、エネルギー問題、気候変動に伴う自然災害や食料問題、為替の変動に伴う輸入販売型のビジネスの苦戦など、世界の遠方の出来事が、私たちの住む地域にも負の影響を及ぼす時代になりました。2050 年には、途上国や新興国の人口は増加を続け、世界の人口は 100 億人に達する見込みです。一方で先進国は少子高齢化の負の影響を実感する時代を迎えます。少子化は経済においては働き手不足をもたらし、地域にはそこに住み暮らす人々が形成していた地域コミュニティの崩壊を引き起こしています。現状の社会・経済システムでは今後は立ちゆかなくなることは誰の目にも明らかなことです。丹羽青年会議所も例外ではなく、ここ数年で会員数は大きく減少をしていました。周囲から見れば先細りし衰退していく組織のよう見えていたかもしれません。しかしながら在籍するメンバーが困難な状況にも諦めず、一年一年想いを繋いできた結果、昨年大きく会員数が増加しました。今の丹羽青年会議所には各会員の個性を受け止める柔軟性が存在し、組織の中で各会員が輝いています。こうした組織の雰囲気や勢いは周囲から見ても感じることが出来るほどです。勢いのある組織は目指すべき方向性が一致すれば社会に大きなインパクトを与えることが可能です。行政や企業では取り組むことができない、青年会議所ならできる、青年会議所だからこそできる新社会システムの構築に取り組んでいきます。運動を構築する楽しさ、その無限の可能性を一人でも多くのメンバーに理解してもらい、未来の課題を予測し創造する運動を展開して参ります。今こそ我々が JAYCEE の綱領に記載された「社会的・国家的・国際的な責任を自覚」し、丹羽青年会議所の創立宣言文に記載されている「大きなうねりを起こす」時です。そして丹羽青年会議所の創始の精神を未来に繋ぐために、今日から新たな一歩を踏み出します。
【丹羽郡の未来を想い】
我々丹羽青年会議所は活動エリアである大口町と扶桑町を、どうしたら経済面や生活面において活性化させられるのかを考え行動し、魅力のあるまちづくりに貢献します。活動エリアである大口町は自然と田園風景を残した住環境と豊富な行政サービス、自動車での交通の便が良いという利点を活かし、物流の拠点だけでなく世界にも通用する技術力を持った企業も多数本社を構える経済的に豊かなまちです。扶桑町は木曽川を中心とした豊かな自然が残るエリアでありながら町内に 3 つの駅が存在し、名古屋から特急電車で 20 分という都市部へのアクセスが良好であるため、ベッドタウンとしても好立地であり子育て世代や、ファミリー層にも人気の場所です。大口町と扶桑町にはそれぞれに魅力と強みがありますが、近年は情報技術の発展と物流の発達によって、産業や技術、観光資源を活用した国や県の単位を超えたまち単位で世界から注目を集めることが出来る時代となりました。世界的に見るとインドのベンガルールやイスラエルのテルアビブ、国内では半導体工場で注目される熊本県菊陽町は観光的には目を引くものがないように見えますが、地域の資源や周囲の環境を活かしたロビー活動によって日本中の注目を集めるまちとなりました。大口町と扶桑町も豊富なまちの魅力と強みがあり、丹羽青年会議所は 2 町を活動エリアとする団体であることの強みを活かし、行政区画にとらわれない視点で丹羽郡の未来の形を探り、丹羽郡の発展の活路を模索し提示していきます。
【地域との交流が子どもたちを育てる】
皆さんは電車に乗ったとき、何を感じるでしょうか。座っている人も立っている人も、年齢に関わらず、9 割の人がスマートフォンを見つめている光景に違和感を覚えた経験はないでしょうか。私は様々な国々へ渡航してきましたが、日本は他国と比較して、圧倒的に公共の場で周りに注意を払っていないように感じます。現在所属している青年会議所メンバーの子ども時代は、デジタル技術が徐々に発展しアナログからデジタルへの移行期でした。そのため、子ども同士の遊びにおいても友達の家へ遊びに行ったり、行事に参加したり、外で遊ぶ際には地域の大人と接し、見守られながら生活をしていました。その過程で自分が住んでいる地域に対して思い出と共に愛着を感じるようになり、今では青年会議所の活動を通じて自分を育ててくれた地域に貢献したいと思うようになりました。また、大口町や扶桑町は昔から大規模な集合住宅が少ないことから新しい人の転入が少なく、地域の結びつきが強いという特徴がある地域でもありましたが、近年はスマートフォンや SNS の発展により、子ども達は人と人とが直接交わらなくても不自由なく生活できるようなりました。その結果、地域コミュニティの希薄化が促進され、成長の課程で多様な世代とコミュニケーションの機会や、地域・伝統文化を経験や継承していく機会が無くなりつつあります。これにより、子どもたちは自分が生まれ育った地域に思い出や愛着を感じる経験をしないまま成長し、改めてこの地域を見つめ直したときに地域に魅力を感じることができず、この地域を去っていきます。それは 終的に地域コミュニティの崩壊を引き起こします。本年度丹羽青年会議所は、活動エリアでの地域行事や伝統芸能、お祭りを通して子どもたちの成長の機会と、多様な世代が交流し協働することで生まれる地域コミュニティの形成と強化を目指します。そして最終的には子どもたちが大人になっても住み続けたい、戻ってきたいと思うような心境の変化を引き起こします。
『国際的な責任を自覚する組織として』
我々の住み暮らす丹羽郡には多くの企業が進出しており、それに伴い海外から多くの方々がそれぞれの夢や希望を抱きながら日本へ移住し、働き、子どもを育て、このまちで生活をしています。夕方になれば、自転車に乗って楽しそうにおしゃべりをしながら家路についている海外の方々を多く見かけます。しかしながら、海外からの移住者はこのまちを愛してくれているでしょうか。海外の方々が地域のコミュニティに溶け込めるようなまちの環境や私たち住民のメンタル面での受け入れ体制は万全といえるでしょうか。果たして自国に帰った後もこのまちは住みやすくて良かったと他の人に勧めてくれるでしょうか。我々丹羽青年会議所はこの地域の発展や企業の雇用の未来を見据え、上記の問いかけに対してイエスと言うことの出来るよう、海外の方々との交流の機会を創出し、交流を通して海外の方々が住みやすいまちの形を模索し未来に誇れる国際色あふれるまちを提案して参ります。このまちに住む日本人と海外の人との相互理解を深め、相手が置かれている環境に心を寄せ、未来に誇れる国際色あふれるまちをめざし、行動を起こして参ります。
『結びに』
私たち丹羽青年会議所メンバーは、青年である満 40 歳までという限られた期間の中で住み暮らす地域をより良くしたいと願い活動しています。それはお金のためや利己的栄達のためにでもなく、ましてや名誉と称する空しきもののためにでもありません。志を同じうする者相集い力を合わせ青年としての英知と勇気と情熱をもって明るい豊かな社会を築き上げようと、大志を抱く青年が所属している団体であります。昨年、丹羽青年会議所は創立 30 周年を迎え、本年度はその一つの区切りを経て、31 年目という新たな一歩を踏み出す重要な年となります。31 年目以降も地域をより良い形にしていくために、丹羽青年会議所の組織力を強化し、そこに所属する会員の能力を事業や例会の中で高める必要があります。強い組織には、多様な個性を包括し時代に合わせて形態を変化していく事が可能な柔軟性、協調性が存在し、その組織の中に所属する会員には、互いの個性を引き出し高めあうコミュニケーション能力、多様な選択肢や意見がある中から 1 つの方向性を信じて進む決断力、そして少しの余裕と遊び心を持ち合わせていることが理想だと考えています。2025 年度は私が転籍前の青年会議所や出向で得た出会いや学びを活かし、我々の住み暮らすまちと本気で向き合う年にしていきたいと考えています。苦しくても、困難な壁に直面しても大志を抱く青年の後ろにはそれを支える人が必ずついてきます。もし自分がそこから居なくなったとしても大志はその次の人に受け継がれ、それを積み重ねればまちは必ず思い描いた形へと姿を変えていく。私たち会員一同、個々が持つ資質を 大限に活かし、かつ協調し、雲外蒼天の精神でこの一年を楽しみ抜いてまいります。